「オーディオ雑談カフェ」 2.〜最先端を行く?NHK放送技術研究所・技研公開2006〜 2006-6-2 音迷人 ◆今年は5月25日〜28日に公開するとのこと、最終日カフェ代表?でさっと観て来ましたので報告します。当然オーディオ中心です。 |
|
今から丁度半世紀前(こんな書き出しが多く恐縮しています)、確か夏休みに担任の先生が盲腸を散らし損ねて、急に入院し手術を受けました。情報が回り、友と誘い合って病院に見舞いに行ったあと、近くのNHK技研に寄りました。ひょっとしたらこちらが本命?だったかも知れません。その時が公開日だったのか、平常時だったかは覚えていませんが、はっきり覚えているのはカラーテレビ、送受信モデルを見たという事です。当時は街並みも無く田舎のような広々とした所にさほど大きくない建物だったと思います。ボンネットバスを降り玄関を入ると直ぐ展示がしてあったと記憶しています。それは良き時代風のファッションで帽子に手をやり、花に囲まれた西洋のお嬢さんのアップの大きなカラー写真?がまず掛けてあり、それをカラーテレビカメラで撮影し直ぐ側のカラーテレビ受像機で映し出していました。写真や印刷技術は当時当然そこそこの技術レベルでしたから、被写体であるモデルの額は綺麗に出来ていました。受像機の映像はと言うと、今の人が見たら恐らく笑い出すと思えるほどで、白黒画面に似たような色を付けた感じ、それも幼児のぬり絵のようにズレた感じです。今でもブラウン管タイプの絵を注意深く見てみますと赤などはズレていますが、3cmの薔薇の花があれば、その右5cmまで赤が流れている感じです。悪く言えば色が対応していない訳ですから白黒画像に薄めの絵の具のパレットを広げたようなものです。これがカラーテレビの始まりだったのです。何事も始まりはこんなものですね。 現在はガラス張りの立派な玄関ですが、入ると脇に年表が掲げてありました。参考に読めるように二分割して揚げてみます。今回は訪問レポになるので写真が多く成ります。頑張ってスクロールしてください。 |
|
◆世田谷通りに面した技研の玄関です。私が帰りに撮りましたので白いクサリ綱等片付けられていました。500万画素デジカメを縦横約1/4に縮めて掲載しています。このメルマガの幅一杯の写真は幅方向で約600画素です。何故こう書くかと言うとその次にあげる「スーパーハイビジョン」の写真と比較して頂きたいからです。 |
|
ことの是非は申し上げませんが、ハイビジョンが普及し始めている今、さらに高臨場感のスーパーハイビジョンを開発しているのです。映像機器に全く素人の私がまとめるので不十分かと思いますが、目的は2点のようです。 ★決まった枠の中では画素数を増やしてより細密に! ★枠を広げて視野を広げても耐えられる画質! これらの目的のため現在のハイビジョンより、縦横ともに4倍の解像度即ち16倍に設定しているそうです。(3317万画素) カメラもモニターもまだ未完成で16倍で出せないので、縦横2倍総画素4倍で出しているそうです。(829万画素)下の写真はそのモニター受信機の映像で、玄関を生中継で出していました。そしてそのモニターにデジカメを近づけてクローズアップしますとその次の写真でクサリノ輪や掲示板の小さな文字も確り判別できます。始めに書いた50年前のカラー映像からすると信じられない出来です。これなら全くシアターベースでも問題ないレベルでしょう。そう思っていましたらこの展示コマの次の中ぐらいのスタジオで、実際に9m×5m位?の大型画面に先のモニターで見せた玄関と、ニューヨークのタウンロケやバスケット試合などを見せてくれました。音は22・2チャンネルサウンドと書いてあります。ボーズのバズーカが4本ほどブーブー鳴ってました。画像は静止部分の迫力や細かさなど再描性は申し分ありませんでしたが、動くものの解像度がまだまだ十分でなく、バスケットでは目がおかしくなりました。表示装置の仕様等訊けなかったので問題がどこにあるかは定かではありません。しかし画素を細かくすれば解りきったことではありますが描写は向上し素晴らしいです。現実のシステムとなって行くためには各デバイスの研究開発が進まねばなりません。見てしまうとここまで要るのと批判的でも「凄いなー」となってしまいます。完成お披露目は2025年頃の予定だそうです。私にはチト厳しいぞ!早く世に出てもきっと高くて・・やはり厳しいぞ! しかし「当座の結論」を冷静に考えると「人様の視覚は良く出来ているので大切に!」と言うことでした。 |
|
◆将来の放送と家庭のつながりはフルデジタル放送を迎えて、ブロードバンドネットワークと組み合わせ、多様性をもっているというモデル展示です。 メニューを映しだしたら見たいもの、知りたいことへ選択して進めます。正にテレビ「ウインドウズ」方式ですね。ダウンロード残りクーポンなんてちゃんと商売のことも考えてありますよ。長編ドラマ「功名が辻」にかけて、ユーザー名を出していますから契約登録しないとダメのようです。 |
|
|
|
さあここから先はお待ちかねのオーディオ関係です。 展示の点数、エネルギーで見ると全くオーディオはここでは情けない状態です。再生装置についてはモニタースピーカーの開発(ダイアトーン⇒フォステクス)はしたが(させた?)、民生用に関わりそうな技術開発には、とんと熱は入れてなかったようです。メーカーが元気が良く沢山在ったから良かったものの、昨今のオーディオ事情では公金?が使えるNHKさんに頑張ってリードしてもらわないと!単なる音声伝達装置に成り下がってしまいます。 私がやっと見つけたオーディオ関係の展示は以下の3件でした。 ◆5.1サラウンド音声製作技術とサラウンドマイク ◆耐悪環境用超小型マイク ◆未来の立体音楽堂:多チャンネル収録、再生システム |
|
|
|
◆耐悪環境用超小型マイク:といっても火にくべるわけにはいきませんが、シリコンマイクのため、一般マイクが苦手な高温多湿に耐えられる上、小型ですので補聴器などにも使えそうです。マイクエレメントはコンデンサータイプで、単結晶シリコンからIC技術の応用で安定した特性で大量に造れます。特性は感度:-42dB、周波数帯域:30〜20KHzだそうです。 写真横は説明展示 写真下左はエレメント、右は水滴暴露環境。この水の音をヘッドフォンで聴かせていました。 去年はブース内で生Vn演奏をプロトタイプマイクで拾って、ブース外でモニターしていました。その時の音は伸びやかでまじめな音でしたが、少々地味と感じました。しかし段々鼓膜レベルになってよい信号を出してくれそうで、オーディオとしても楽しみです。 |
|
|
|
◆今回のオーディオ部門での目玉展示でしょう。仕掛けが大きいので楽しいのですが、さてどうなりますか? 横の写真はNHK説明看板からです。まずマルチチャンネルで録音します。私が推測して申し上げるしかないのですが、まず今回は技研のホールより少し大きいカザルスホールで録っているように見えます。舞台上のオケに対して、再生チャンネルで18チャンネル相当、ホールの響きを14チャンネル相当の信号送り出しとしてマイクを置いているようです。技研の再生ホールではオケ舞台側にスピーカー18基(調整の様子の写真)壁のこげ茶のストライプ状のスピーカー14基(7×2)で音出しします。この手法は大変古く、すり替え演奏で行われた考え方の発展形でしょう。新しいことは恐らく信号容量と保存、バランスコントロールの適正化、伝送の方法などでしょうか?舞台に並べられたスピーカーは前列メインがまたまたノーチラス(白寿ホールも)ですね。他のは良く解りませんが、ピュアオーディオ用に見えます。奥行きや高さを出す工夫をした配置です。左手にコンソールがありこれがマトリックス的にコントロールしているのではないかと思います。展示演奏は下記の写真のようにスピーカーを紗で隠して行っていました。 |
|
|
|
さて「未来の立体音楽堂(懐かしい)」を聴いて見ました。曲はモーツアルトVn協奏曲第5番「トルコ風」やフィガロの結婚序曲などでした。説明時に有る様な事を解説者が説明し演奏に入ります。管弦楽は臨時編成のオケが担当し事前にマルチ録音録画してあります。推測ですがオケは20人前後でしょう。まず1番前の席と4列目で聴いて見ました。音響空間は流石に広く、かなり自然でした。オケを聴くために方向が解る必要は無いのですが、結果として「こちらがチェロだなクラが真ん中奥だぞ!フムフム」と解る音場を形成していました。音量は適正でしたが、音質はやはり生とは違いました。コーン型のスピーカーの音なのです。即ち少し膨らんだ感じの中音域が気になりました。音場OK音質?です。 Vn協奏曲は地下2階の部屋でVnソリストが待機しており、オケのカラオケを流すと演奏し、それをマイクでピックアップし生放送宜しく舞台の専用スピーカーで送り出します。これはかなり良い音でしたが、Vnがバランス的にも音像的にも大きく、かつスピーカーの音がしていました。まあ主観的なことなので良い悪いは置いておきましょう。それよりソリストが来てるのですから、舞台に上げてSPをバックに弾いて、本当のカラオケをやって貰いたかったです。それはともかく生に近いことは確かで、ボヤッとしているとSPとは気が付かないかも知れません。 |
|
写真上はホールの様子。黒い紗が下げてあります。壁の縦じまの所がホール音用SPです。 写真下は説明用画面で地下2階の「生ソリスト」を映していました。その中のテレビは指揮者で、この姿と、音楽を聴いて、Vnを合わせます。ソリストの努力の結果全く問題は感じませんでした。ですから曲の解釈や即興性からして邪道ですが、ウィーン・フィル/小澤征爾でカラオケしてVn五嶋龍でメンコンなんて出来るわけです。我が家の2チャンネルステレをの感激とどうかといわれますとソフトが良い前提(常々言っている加工の少ないこと)では効果的ですが、ここまでやっても興奮度はさほど上がらないような気がします。デジタルでしょうから位相や時間ディレイを上手く使えばもう少しチャンネルを減らせます。演劇舞台やツアーコンサートなどのサウンドエフェクト用が大きな市場でしょう。歌謡番組の経費削減に使えないかな。スーパーハイビジョンも同様でしょう。 いろいろ開発すべきことは多いと思います。日々大変ですがどうぞ適正な「砧」で問題を打ちほぐして、素晴らしい衣(技術成果)を造ってください。なにせ技研の所在地が世田谷は砧1丁目ですから・・ つづく |
|
おまけ◆左下は玄関ホールで見かけたドイツ製PA用スピーカーです。初めて見ました。上のヴァイオリニストのモニター用も同じシリーズのようです。読者の方でご存知の方は教えてください。いい顔しているので期待できますね。 右下はエントランスで玄関を中継していたスーパーハイビジョンカメラとマイクシステムです。 |
|
|
|
◆最近出たオーディオがらみで興味深い本をご紹介しましょう。ライブや録音サイド、送り出しサイドの滅多に聞けない話、つまり録音現場での演奏家の素顔や、はらはらドキドキな話です。 さらに本の中の技術の章で、あの有名な「立体音楽堂」の歴史、FM放送の発展、デジタル録音の必然性などの技術的な問題の解決について、NHK技研にも居られた方が解りやすく述べています。目から鱗で、大変参考になるとともに放送技術への愛情が感じられより身近になります。放送を見聞きする時こちらはお茶でも飲みながらスイッチを入れて選局するだけですが、送り手は大変な苦労をしていたのですね。有り難いことです。 20世紀も終わりの年、「20世紀の名演奏」と題してNHKが手持ちの記録を使って、何夜か放送しました。この放送の特徴は古い映像(フィルムや低性能ビデオ?で雑音が多く音が悪い)を少しでも良い音、即ち音声放送で用いた純録音テープの音、そのステレオ録音に同調させたことです。この章の筆者はこの技術を指導、駆使されたのです。このアーカイヴは実際には今DVDでクラシカルシリーズとして何巻か発売されています。 本の名前は東京FM出版「伝説のクラシックライブ」です。勿論もう聴けない巨師たちの日本での名演奏名録音ライブ盤の紹介もたっぷりありますよ。お近くの本屋さんで取り寄せられます。 |
|
|