「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-3-3 音迷人 9.オペラ?:ロッシーニ/セビリアの理髪師 左は下記公演時(1963年)のチラシの1部分です。 広告はホームステレオの代表的な形です。FMつき、オートチェンジャープレーヤー。何と6万5千円 |
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広辞苑に「OPERA BUFFA:オペラブッファ:喜歌劇の一つ。18世紀成立したイタリア語による滑稽諷刺的なオペラでオペラセリアに対している。軽快な音楽を主とし、重唱を多用する。ロッシーニの「セビリアの理髪師」などとでている。 そうです辞書にも出てくるオペラを書いたロッシーニ(1792〜1868)はイタリア中部に生をうけた。母がボローニャの歌劇場所属の歌手であったので、ボロ−ニャに移り住み、音楽学校に通いだした。作曲家として二十歳前の作品オペラブッファ「結婚市場」で認められ「セビリアの理髪師」で不動のものとなった。素材はあちこちにあったとは言え、2週間で「理髪師」を創ったのですから、その才能は凄いです。ホ○エモン並みの錬曲術?ですな。39の歌劇を作ったといいますが、その音楽フレーズはあちらに出たりこちらにあったりとかなり部品的に扱った面もあります。自己盗作だ!(-_-;) |
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このオペラの筋書きはフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲をベースにしています。 粗筋はロジーナに一目惚れしたアルマヴィーヴァ伯爵が理髪師:何でも屋のフィガロと組んで、財産を狙ってやはり結婚を狙っている後見人バルトロ(ロジーナは姪)や音楽教師バジリオと対抗し、知恵を使ってロジーナと結婚するまでをまとめています。お姫様と結ばれる正に今日の「おひな祭り」向きなオペラです。これが第1部の戯曲で、後につながる「フィガロの結婚」はモーツアルトがまとめています。こちらはアルマヴィーヴァ伯爵が結婚してからの後日談ですが、フィガロがスザンナと結婚することになると伯爵が当時の「領主の特権(初夜権)」を行使しようとし、フィガロや奥方つまりロジーナ連合と知恵比べ。庶民代表フィガロ連が勝ち、目出度しめでたしと言うお話。親子関係など色々な設定があって、良くTVで観る安ドラマの感がありますが、たわいなく気楽に楽しめましょう。さりながら庶民の上流階級に対する風刺、抵抗と見るのでしょうね。 |
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さて「セビリアの理髪師」には本当に楽しめる洒落たアリアや重唱が沢山あります。名前(歌いだしの台詞)が付いているのですが100%楽しめます。 その中で有名な例は下記ですが、オーディオチェックを書き入れておきます。 ◆序曲:有名な軽快な音楽で何度も聴かれたことがあるでしょう。弦が綺麗で際立っていること。木管が柔らかいこと。リズム楽器的なラッパが明確で切れが良いこと。中間の木管ソロの受け渡しで、楽器の種類がはっきりこれと解ること。さほど低い低音が入っていないが早い刻みが表情豊かに聴こえることなどでしょう。さほど大きなオケの響きではありません。 ◆アルマヴィーヴァ伯爵の「空が白み」:伯爵がリンドーロという学生に成りすましてバルトロの家のロジーナの居るベランダを見ながら歌います。セレナーデを献上?タンバリン、ギターを伴奏に歌います。舞台脇から来るタンバリンの質感、ギターの爪弾きは良く耳にしている楽器ですから判断できますね。以後もそうですがライブだと舞台の足音、きぬ擦れ、道具の音など随所に出て来ますので、本物の響きに近いか聞き分けて下さい。テノールの実に柔らかい声が聴かれます。人間の声は実に色々な表情を持っていて美しく、ダイナミックレンジも中域としては有る方ですので、潰れないで再生できるか、うるさくないかチェックしてください。バスからソプラノの声の「基音」は約80Hz〜1000Hzですからまずこの帯域がフラットで質に問題が無いことです。大入力にも余裕があることです。こう考えると音量を上げがっての人は一般的にコーンスピーカーではボロが出ましょう。 |
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◆フィガロの早口ソング「私は街の何でも屋」:バリトンはテノールに比べ声質は落ち着いて少しハスキーに成ります。(テノールは頭に響かせるらしいので、張りのある高い音になるんだそうですが、名テナーはとかく目立つし人気なのでやっかまれて、頭で響かせ脳がいかれていると「テノール馬鹿」と陰口を・・・)早口で唾が飛ぶような感じが出ればOK。オケは掛け合うのですが、フォルテでも歪まず弦がチロチロ鳴っています。 ◆ロジーナのアリア「今の歌声は」:(ウナ ヴォーチェ ポコ ファ)と歌いだしコロラトゥーラソプラノの歌い回しが入って聴いていて面白いですね。LP再生では濁ったり、ビビルことが無いようにPUを調整しましょう。ソプラノの柔らかい歌いだしと、対照的なターンと張り上げた対比、フォルテでのビブラートが汚れないことが重要です。フォルテで張り上げて音程を動かす時、残響が追っかけてきて、空間を感じます。ソプラノの低い音は胸に響かすような感じに聴こえます。 ◆バジリオのアリア「陰口はそよ風に乗って」:独白的なうたですから、そっと入ってきてだんだん興奮してゆきます。途中太鼓の強打があります。そよ風のように始まった陰口は(噂は)だんだん嵐になり雷のように、攻撃するだろうと言うところでしょうか。太鼓はティンパニーと思いますが、大太鼓を加える場合もあったかと思います。太鼓の皮の感じを確認してください。 ◆バルトロのアリア「わしのような医者に向かって」:歌も大変面白いですが、伴奏がさまざまな変化を見せます。その特徴が確りと出ていることです。Vnのチョロチョロ可愛く鳴るところや早口で怒っているところの伴奏も声にかぶらず明瞭に動いて聴こえます。フィガロもビックリするほどの速射砲でバルトロ爺さんが歌うには中々大変な曲ですよ。この歌劇の象徴的な歌の一つでしょう。喉が広がって胸から出てくる音の感じが良く解ります。 ◆三重唱:「何と意外なことでしょう」「黙って、静かに」:ソプラノ、テノール、バリトンがそれぞれ恍惚的にまた軽妙洒脱に正に「吉○喜劇風」に歌います。混濁しないこと。舞台の動き、位置が解ることでしょう。フィガロは得意になって「見ろ見ろ俺の才能を!(グワルダ グワルダ ミオ タレント)」と繰り返します。イタリア語で解らないから良いけど、日本語ですと間違いなくこの辺は学芸会風ですね。 ◆フィナーレ「この素晴らしき幸せ」etc.:実に素敵な歌い上げでこんな調子の良い歌があるのだろうかと只ただ嬉しくなります。合唱がより綺麗に広々と響くかですが中々難所です。LPでは最内側ですので、まず我慢せねばならないでしょう。テノールの明るい響きは人の声の不思議を感じます。 録音側の責任もありますが、歌の再生は中々大変です。LP時代皆様苦労されたと思います。まず歌ではフォルテでかつ横隔膜を盛大に揺らして、ビブラートを掛けるフレーズが多いのですが、これが再生時に変調して声を汚してしまうのです。耳にビブラートに同調した圧力がビキビキときます。原因は録音時の変調歪・再生アンプでの歪み、スピーカーの歪み、部屋の共鳴(定常波)、耳の音圧による非線形的?歪みがありそうです。もし発生していたら、比較法など考えて、原因をあぶり出し、対策してください。 |
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こうして聴いてくると解ると思いますが、繰り返し出てくる媚薬があります。それはロッシーニさんのノウハウ:「ロッシーニクレッシェンド」です。「クレッシェンド:だんだん強く」ですがこれを小刻みなリズムに乗せて、急き立てるように高揚させてゆきます。喜劇のスピーディ感、ワクワク感、セカセカ感が実に良く出ますよね。 良く演奏される歌劇はこの理髪師、アルジェのイタリア女、ウイリアムテルでしょうか。レコードやコンサートでは楽しく小粋な多くの序曲が人気ですね。(序曲集CDが沢山あります) つづく |
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おまけ:◆戦後の日本でオペラが盛り上がったのはNHK招致のイタリアオペラではなかったかと思います。私事ですが私も音楽好きな一青年として、懐と相談して一回だけ聴きに行きました。後は放送やTVで我慢しました。本箱を探したら当時のプログラムが出てきました。どこをどうやってか記憶には無いのですが、サインまで貰ってあります。これはお宝になるのかな? 私はシミオナートさんのファンですが、数年前赤いジャケットを着てTVに元気な姿を見せてくれました。来日した頃はプリマでしたから2〜30代と思い込んでいましたが後でお袋ぐらい(50代)と知ってびっくり。今は100歳近いかと思います。 プログラムの一部をお目ざわりでしょうが紹介させて下さい。ちなみにD席(天井桟敷)で2,000円でした。確か初任給2万円の頃です。1963年第4回目の招聘でした。 写真左:公演スケデュール 写真右:共通プログラム(約80ページ) |
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写真上:天井桟敷の人々の為のチケット。それでもD席@2000円 購入は6/20銀座山野楽器にてとある 写真下:いくつか貰ったサインの一つ。フィガロ役のアルド・プロッティさんで辛うじて読めます。 |
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写真左:舞台書割や衣装のイメージ図 写真右:我がメゾ、シミオナートさん。私が生まれた頃スカラ座にデビュー。イタリアの国宝的歌手と説明されています。音迷人は彼女に「ドラマティック・メゾ」と冠したいです。 写真下:トリノ・オリンピック、女子500mスピードスケートにシミオナート選手が出ていました。親戚かしら?一生懸命書いていると、こんな偶然(語呂合わせ)を呉れるんですね。 |
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