THORENS Prestige(トーレンス プレステージ)解体新書 大須本店 越濱 靖人
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今回は、フローティングの調整ネジが固着し、高さ調整が出来ない不具合があり、分解してみることにしました。下の写真で見える4箇所の丸い穴にマイナスドライバーを刺して回すのですが、いつもの様に回りませんでした。完全にロック状態です。
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左右のアームボードとターンテーブルを外した状態です。土台に見える極太のボルトとナットは輸送ロックになります。輸送時はナットを一番下まで下げて完全にフローティングを止めて輸送します。逆に使用する場合は写真の様にナットを上げてフローティングする様にします。たまにロックされたまま使用している方がいますので一度確認してみると良いと思います。
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底面の様子。TAOCのスピーカーベースで本体を浮かせて撮影しています。上のターンテーブル土台を浮かすバネ式の器具が四隅に見えます。どの様に持ち上げているのか、この時点ではわかりません。
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底板を1枚外した様子。少しずつ形状が明らかになってきました。大きなブロックと腕になる部品のネジを外してみました。
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大きなブロックと腕の間には分厚いゴムプレートが挟まれています。振動抑制のためかと思われます。
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まだ底板を外す前の写真。大きなブロックから腕を外さないと底板が取れなかったため一旦ブロックをバラしました。その他、奥についている電源スイッチボックスを外す必要があったためハンダで外しました。
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外した底板の様子。材質は鉄板なのでかなり重いです。防振シートらしきゴムシートで覆われています。さすがに発売から30年経つ汚れが感じられます。その後綺麗に掃除しました。
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底板を外した本体の様子。本体の方にも防振ゴムがしっかり貼られていました。それにしても頑丈な本体です。各パーツが大きく精度が良いです。さすがドイツ製!
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なかなか本体の上部パネルが外れません。探していたところ上面とつなぐダンパーらしきパーツを発見。四隅に付いています。外してみます。
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上面のパネルを外そうとしたところ、フロントのコントロールパネルが当たって外れませんでした。早速コントロールパネルを外します。これはネジ2本で固定されていましたが固着してなかなか外れませんでした。なんとか外れたところで引き抜いてみたところ、たくさんのコネクターで内部と繋がれていました。
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なかなか几帳面に色分けされています。シールも付いているため結線しやすいです。
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コントロールパネルを外した隙間から見た本体の写真。本体側にも基盤が入っており中身も詰まっている模様。太い輸送ロック用のネジに大きなストッパーが入っていますので、これ以上天井が下がることは無い設計です。
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ようやく天板が外れました。とにかく解体はパズルの様に複雑です。モーターは煙突状の土台に設置されています。やっとフローティング器具の全貌が見えました。
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器具の拡大。固着したネジを無理に回そうとしたのでしょう、ネジ山が相当崩れています。ネジは固着して全く動きませんでした。結構サビも出ていますので、一旦解体しないとダメでしょう。
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唯一この器具だけ少し回すことが出来ました。見るからに古いグリスが固着してそうです。一旦引き抜いて見ます。
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抜いて見た様子。ターンテーブルのスピンドルの様な構造です。大きなブロックに開いた穴の中にはパチンコ玉くらいの鉄球が入っていました。軸受けは鉄球で受けている事がわかりました。
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軸受けの写真。本来はスムーズに回るはずですが、見ての通りグリスが劣化し接着剤の様にくっつきます。パーツクリーナーを使って出来るだけ溶かし落とします。
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ようやくスムーズに回るところまで来ました。スピンドル部もスルスルになり、ネジ部も軽く回る様になりました。
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ブロックの軸受け内部も洗浄しました。新しいグリスを塗布し回転もスムーズです。ガイド棒が錆びていたので撮影後、研磨しオイルを塗布しました。
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なんの回路かわかりませんが本体に付いていた基盤の写真です。メンテナンス性を考慮してか、取り外しが容易にできる様になっていました。
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せっかく解体したので出来るだけ掃除しています。パカっと持ち上げることも可能です。配線も非常に考えられています。
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解体の流れからは全く関係ありませんが、一番底面に付いていた電源スイッチボックス。先ほど配線を外した際に撮影しました。この小さなトグルスイッチがプレステージの主電源となります。手前についたDINコネクターより電源を供給します。その他アースも付いています。ボディー全体のアースはここに集められています。
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組上げ後フローティング調整しています。写真の様にドライバーを刺して手前2個、奥2個のバランスを調整します。特に奥側の2点はアームボード上から刺しますので相当長いマイナスドライバーが必要です。水準器を使って水平が出れば完了です。
なかなかプレステージを解体する機会がなかったため良い勉強になりました。精度や機構など妥協の無いものづくりに感動しました。当時のドイツ製は本当に素晴らしいですね!
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