お世話になっております。 京都商品部の八木です。 いよいよ本州も今週から梅雨入りということでジメジメ暑苦しい日々が始まりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 今年は夏までは例年より暑く、夏は例年並みの暑さと、とある気象予報士が言っておりましたが、それはつまりもうすでに夏の暑さが始まったということなんでしょうか? そう考えると今月から海やプールに遊びに行っても良さそうな気がしますねー。 |
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今回のメルマガではALTECの名器「A7」について触れてみたいと思います。 マニアの方には説明なんて必要ないとは思われるALTECの代表的なスピーカーですが、「A7」とは1954年にALTECより発売された、「ボイスオブザシアター」と名付けられた劇場用スピーカーシステムの一つです。 他にも「A1」〜「A10」までラインナップがあります。(下写真では左上からA2,A4,左下からA5,A8,A72種のラインナップです/1975年カタログより) 側面に「Voice of the Theatre」とステッカーの貼られている事が多いのですが、「シアター」のスペルが「Theater」ではなく、実は「Theatre」だと気付いたのは割と最近でした。 下写真左:「オーディオの足跡」より https://audio-heritage.jp/ALTEC/speaker/a7.html 下写真右:「LansingHeritage」より http://www.lansingheritage.org/html/altec/catalogs/1975-pro.htm |
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「A7」は1954年の発売から、最終的には1996年頃まで販売されていたような超長寿なスピーカーです。(2005年に復刻モデルも発売されています) さすがにそれだけの長寿モデルになると時代に合わせ幾度かの仕様変更があるのですが、その中でもオーディオ全盛期でもある1970年代に販売されていた「A7-500-8」について僕なりに調べ、推測したことを報告させていただきたいと思います。 まず「A7-500-8」は1970年〜1977年まで販売されていたモデルで、名前の由来かどうかはわかりませんが、500㎐のクロスオーバーを持つ8Ωのシステムです。 |
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「A7-500-8」ではまずホーンの「511B」、ネットワークの「N501-8A」は基本構成の一つになります。 他のウーファー・ドライバー・エンクロージャは年式により違いはありますが、このホーンとネットワークだけは「A7-500-8」では基本のパーツとなります。 |
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続いてはウーファーです。 2種類あり、最初は「416-8A」、次は「416-8B」になるようです。 1975年のどこかで仕様変更されたようです。 |
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上が「416-8A」、下が「416-8B」です。 正面からはガスケットの種類や太さが、裏側からはフレームやマグネットの部分に違いがみられます。 もちろんサウンドも少し違います。 |
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ただ中には上のような「416-8B」のフレームの「416-8A」もあったりします。 おそらく仕様変更寸前のモデルと思われます。 続いてはドライバーの「808-8A」(左下)、「802-8D」(右下)です。 こちらは1973年に変更されているようです。 |
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形はほぼ一緒ですが、「802-8D」になってから年式を追うごとに、型式の入ったステッカーの形や貼る位置が変わっていきます。 また、「808-8A」はシンビオテック・ダイアフラムというエッジがフラットな樹脂製のダイアフラムを採用しており、「802-8D」のダイアフラムの波波としたタンジェンシャルエッジとはエッジの形状も違うため、ここは音質の違いに影響を与える箇所になると思います。 ただ「802-8D」に仕様変更されて間もない初期の頃は、「802-8D」もシンビオテック・ダイアフラムを採用していたようです。 |
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ただALTECのカタログでは、1975年から「802-8E」というドライバーが採用されているという事らしいですが、未だかつて「802-8E」というドライバーには遭遇した事がありません。 また「別冊STEREO SOUND」誌の「The Voice of the Theatre Systemの変遷」の表(*)では、78年までは「802-8D」で表記されていました。 いろいろな推測もあると思いますが、当時の代理店の「エレクトリ」経由では「802-8D」の仕様だったのではないかと考えており、基本的には初期の「808-8A」と、以降の「802-8D」が主な仕様と思います。 参考:LansingHeritageのALTECカタログ1975年/1976年より http://www.lansingheritage.org/html/altec/catalogs/1975-pro.htm http://www.lansingheritage.org/html/altec/catalogs/1976-home.htm (*)別冊STEREO SOUND「オーディオスピーカーの至宝ーオーディオの世界遺産」(p136〜p139)、2010年 |
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最後にエンクロージャーです。 ここはなかなか推測の域を出られない部分になっています。というのも、ALTECのカタログ、STEREO SOUND誌、Web上に散らばっている情報と、入荷してくる「A7」の構成が様々なところで一致する事がなかなか無いためです。 主には「825B」と「828B」の2種にはなってくるのですが、1975年のどこかで仕様変更されたという事だけは確かなようです。 |
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左が「825B」、右が「828B」です。 ほぼ一緒です。 わずかな違いですが、下部のバッフル板のネジの止まり方が違いますが、これも確実な要素ではなかったりします。 ただ左の仕様で「828B」だった事はまだありません。 ちなみに右写真の「Voice of the theatre」のエンブレムは、「828B」の正規輸入のものに貼ってあるものだそうです。 続いては背面です。 |
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ここは大きく違います。 バッフルの上部だけ外れる「825B」と、全部外れる「828B」です。 ネットワークの位置も補強の有無も違います。 基本的には2種とも構造材は米松合板なのですが、「828B」は後期のものになるとパーティクルボードを使用したものになってくるようです。 それから個人的にはですが、リアバッフルの上だけ外れるのは「825」系のエンクロージャーに共通しているのではないかと推測しています。 だいたいこの2種のエンクロージャが「A7-500-8」として入荷してくるのですが、個人的にはもう1種あると考えています。 |
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それがこちら。 個人的には「825A」なのかなと思っています。 背面は「825B」とほぼ同じです。 前面はバスレフ部が3枚仕様になっています。 1966年のカタログではこのエンクロージャの「A7」が掲載されていたので、もしかすると「A7-500-8」の最初期は(1970年はカタログなどの資料がないため推測ですが)このエンクロージャの可能性もあると思います。 続いてそれを関連付けるのがこちら。 |
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1971年のカタログに掲載されていました。 スペック欄に「HF horn within enclosure」とあります。 こんな時期もあったのでしょうか? 個人的には違和感全開です。 でもよく眺めていると、先程紹介した「825A?」が逆さまになって、下二枚の板が外れホーンがついただけのようにも思えます。 そこで、先程紹介した「825A?」の背面に貼ってあった仕様書を見てみると、なんと同じような仕様が掲載されていました。 右上にも「A7-500-8」の型番が見て取れます。 こういったところから考えまして、73年頃までは「825A?」、75年まで「825B」、77年まで「828B」と、3種のエンクロージャがあるのではと推測されると思います。 |
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いかがだったでしょうか? 「A7」の歴史の中の一部である「A7-500-8」ですらこれだけの仕様があるのですから、他の仕様もまだまだ調査が必要です。 またある程度調査できましたら報告させていただきたいと思います。 それではまた! |