いつもお世話になっております。 ハイファイ堂 京都商品部の滝本です。 いつものように、ここ京都商品部でメンテナンスされたスピーカーの中から ひとつピックアップして、店頭ではお見せしづらい内部の様子などを 組付け(解体)作業の流れに即してご紹介していきたいと思います。 |
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今回はイギリスのスピーカーメーカーであるタンノイ(TANNOY)の 入門機でありなおかつスタンダードであるとも言われる スターリング(Stirling)を見ていきたいと思います。 今回メンテナンスの個体は別売りの専用台も一緒だったので 併せてご紹介していきたいと思います。 |
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それではまず基本データを。 TANNOY Stirling 1983年発売 ¥198,000/台 同軸型2way 25cmユニット・バスレフ・ブックシェルフ型 使用ユニット 2558 (フルレンジ25cm同軸型) クロスオーバー周波数 1.2kHz インピーダンス 8Ω 周波数特性 35Hz〜25kHz 能率 91db 寸法 W486×H700×D310mm 重量 22kg 内容積 68L 銘機、IIILZの後継機たれと開発されたStirling、 そこに加えてAutograph、G.R.F.、Edinburghといった ある意味タンノイらしさを体現している箱の形状も継承しています。 なおかつそれらに比べて小型であり、価格的にも手頃であるので、 こういった点がまさにStirlingが入門機でありスタンダードでもある と言われる所以なのでしょう。 では早速、内部の方を組み付け手順を追って見ていきたいと思います。 |
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エンクロージャー前面からの写真。 |
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コルクシートが張られた正面に見えるのはユニットの為の大きな円形の穴と、 その下に見えるトーンコントロール部の為の小さめの長方形の穴。 この角度からでは見にくいですが両サイドにバスレフポートがあります。 |
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そのバスレフポート部です。 |
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→ 写真はエンクロージャー正面の 右下隅のものなのですが、 細部の形状を見ていると 凝った作りなのが分かります。 |
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作りが凝っているだけではなく 強度も強めなエンクロージャーで 各部の材の厚みが平均して 2.5〜3.0cmくらいあります。 |
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後ろから見てみます。 リアバッフルは取り外しが簡単ですのでメンテナンス作業時は取り外しています。 なかほどには梁のように補強が入っています。 |
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木材だけではなく他の部分も、全体通してしっかりとした造りだという印象です。 吸音材も約4cmと厚めのものが。 |
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↑ 取り外してあるリアバッフルの中央少し上には小さめの四角い穴が。 (ターミナルの部分になります) 裏返してみるとやはりこちらにもしっかりとした吸音材が接着されています。 |
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さて、組付けに入っていくのですが工程としては、 まず左右の前カドの、バスレフポートの可動部分を取り付けます。 この部分も長年のホコリなどの汚れが固まったりで ほぼ可動しない、という状態のものが多いです。 ですので、メンテナンス作業の効率上の理由も含めて、 取り外して洗浄・研磨等を行なってあります。 |
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← バスレフ部、パーツ。 |
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大小二つのパーツが前後で重ね合わさって、 前の小パーツが動く事によって穴が開閉します。 ずらして、開く、わけです。 |
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エンクロージャーにばねを ワッシャーのように使って 取り付ける事によって適度な締め付けで 固定出来ることとなり、 前パーツが動く事が可能になります。 |
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← 内側から見るとこのような 穴あきになっている部分に、 |
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小さい方を先にはめ込み、 大きい方も適度な締め付けで固定します。 |
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開閉の確認。 お互いの上下を組み間違うと穴の位置が違ってきたりしますから 可動のしやすさも含めてチェックします。 公式ではこのバリアブル・ディストリビューテッド・ポート (可変分散型開口部、とでも訳せばいいのでしょうか)で 開き具合を3段階(全開、半開き、閉じ)に調整することによって 低域の具合を変えられる事になっているそうです。 ちなみに部分の可動は無段階で出来ます。 半開きは、例えば右は開けで左は閉じ、のようにする事だと おっしゃる話も聞きますが、そもそも無段階で左右別々で 動くので、自分の好みで自由に動かすのが良いかと思います。 |
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ネットワーク部分、裏表です。 タンノイのこの辺りのネットワークは基盤に取り付け指標のように 文字や白線で情報が入っていますので、分かりやすいですし、 万が一の間違いも防げそうです。 |
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→ 前述で『エンクロージャー前面、 コントロール部の為の穴』、 と言っていた穴を内部から見ると このようになっています。 |
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この穴部分の周辺に突起したプラパーツが6箇所、付いています。 ネットワーク基盤にもこの6箇所にあたる位置に穴が空いていますので、 そこに合わせて差し込み、固定します。 プラパーツは差し込むだけで開いた傘部分が当たって抜けづらくなる構造です。 |
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その後、表側から見るとコントロール部の金メッキ部分が綺麗に抜けて見えます。 その穴のむき出しになっている部分にプラスティックの枠をはめ込み保護してあげます。 見栄えも良くなりました。 |
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↑ 実際にトーンコントロールする時は、円柱形ツマミを 好みの位置にネジのようにまわし入れて調整します。 |
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続いてユニットの装着、 『2558』です。 |
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センターキャップの位置から内部を見ると 奥に蜂の巣のような見た目の穴が。 この穴で位相の補正を図っているそうです。 |
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さて、ユニット裏側からの写真を数点。 ↓ |
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← コネクタまわりの配線を見てみると コネクタの外・外の線がLow(コーン紙裏) に行っているのが確認出来ます。 |
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ユニットのマグネットの周りには品質保証の為のチェックシートが付いています。 項目には、 Magnet Assy (Magnet assembly?) マグネット組み付け? Magnetize 磁化 Diaphragm ダイヤフラム Centring 中央揃え などとあります。(全12項目) 手書きのチェックというところに古いものならではの良さ、 みたいなものを感じてしまいます。 |
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ユニットを装着します。 内部からコネクタを引っ張り出して、 |
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外でユニットと接続し、 六角穴のボルトで絞めて、 |
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4点で固定。 |
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最後にリアバッフルにターミナル部を付けて接続、 蓋をして閉じます。 |
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↑ リアバッフルの吸音材をめくると このような開口部があります。 |
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そこにこのターミナル部のパーツを、 |
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はめ込み、 |
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内部からネジで4点止めします。 |
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結線はこのような差し込みの平形接続子で。 写真では差し込み途中ですが、もちろんしっかり最後まで端子を差し込みます。 |
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配線してしまうと、通常それほど 長い線が付いているわけではないので、 リアバッフルも近くから離せない 感じになります。 個人で取り外される方などは 注意が必要な点かと。 |
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配線を挟む事などのないように注意して閉じてしまいます。 組み付け作業としてはこれでほぼ終了です。 |
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↑ あとはコントロール部の目隠しとなるプレートを付けておきます。 表にはTANNOYの製品プレートに見る事の多い、ユニットの断面図。 裏側は傷つき防止でしょうか、フェルトが全体にわたって張られています。 |
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角の4点をネジで留めておきます。 4点、回すだけなので取り付け、外し共に簡単です。 |
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正面のよく目に入る場所なので、あると無しとでは 随分とイメージが変わります。 |
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本体の方は終了なので、 次にサランと専用台も併せて見ていきます。 |
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↑ 正面サランの上部に「Stirling」の金属ロゴパーツが付くのですが、 まだ付いていない時は表と裏から見てみるとこのような状態で穴あきに。 |
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ここにロゴパーツを差し込んでスピードナットで固定してやります。 ロゴパーツは金属と木のパーツで構成されています。 |
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サラン取り付け時は、まず上部を エンクロージャの上部にある溝に 持ち上げるように差し込んで、 そのあとサラン下部もぴったりと 本体側に押し当てます。 |
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そのままでも一応おさまっては いるのですが、何も固定がなく いつでも外れてしまう状態なので、 鍵でしっかり固定します。 ← 鍵です。 |
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差し込んで回すとサラン下部から鉄の突起部が出て来ます。 それがエンクロージャー側の穴にはまって固定されます。 鍵をかけてまでしっかりと固定する理由は、 音の振動によってサランが動いてそれにともなう 共振が生まれるのを防ぐ、という点が大きいようです。 |
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専用台の構造も簡単に 見ておきたいと思います。 ← 裏には滑り鋲が。 |
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木枠に張られたサランを正面からはめ込みます。 内側からネジで固定。 以外とシンプルな作りの専用台です。 |
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→ 台に乗るとこのような雰囲気に。 以上で組み付け行程終了です。 |
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最後に音の感想を。 とてもタンノイらしいといった音で、 言葉でこの音を伝えるとなると ただひたすら「やわらかい」とか「あたたかい」とかいうような なごみのような形容詞ばかりが浮かんでくる、 そんな音のイメージです。 良くも悪くもスピーカーが音を出しているというよりも、 楽器が音を鳴らしている、といったような音色に感じます。 今回、文中でバスレフポートの調整について少しふれさせてもらったので 普段はあまり気に留めてなかったのですが、 あらためてポートの全開、閉じ、などの状態を軽く聞き比べてみました。 聴いてみたのはヴァイオリン曲で、結果から言うと 私個人としては全開の方が断然良いです。 正直、半分開く、などの状態は全開の時とそこまで違いは感じられなかったのですが、 閉じてしまった瞬間に明らかに「あ、音がこもる」といった印象を受けました。 聴く曲や部屋の環境、機器の違いなどで当然色々変わってくるのでしょうが、 それでも楽器のように鳴っているものにやっぱり蓋なんかしたら駄目だよなあ と思いましたし、逆に言えば、塞いでしまってこんなにも音が悪くなったように 感じるという事はそれはまさしくStirlingが楽器のように鳴っている って事なんじゃないのかな、と一人勝手に納得してしまいました。 率としては割と高い頻度でやってくるスピーカーです。 店頭でご覧いただく機会も多くあるかと思います。 お時間あれば、またそんな鳴り具合の聞き比べもぜひお試し下さい。 現在入荷情報などは ハイファイ堂トップページから http://www.hifido.co.jp/ 検索窓に「 Stirling 」などとご入力の上、よろしくお願いいたします。 他シリーズも含むStirlingの過去情報はこちらから http://www.hifido.co.jp/sold/?M=&LNG=J&G=0201&KW=STIRLING それでは、また。 |