お世話になっております、京都商品部の八木です。 季節はとうとう大寒を迎え、寒さもピークに達しているのではないかと思われる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? ちまたでは恒例のインフルエンザが流行しているようですので、くれぐれもお体にはお気を付けいただきたいと思うところです。 |
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さて、今回のメルマガですが、今回も前回・前々回に引き続きJBLの名機「PARAGON」のユニットについて触れていきたいと思います。 前回、前々回のメルマガはこちらから↓ エンクロージャー編: http://www.hifido.co.jp/merumaga/kyoto_shohin/171027/index.html ウーファー編: http://www.hifido.co.jp/merumaga/kyoto_shohin/171208/index.html 下写真:オーディオの足跡より http://audio-heritage.jp/JBL/speaker/paragon.html |
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今回紹介する「PARAGON」のユニットはドライバーの「375」(後期は「376」)です。 このユニットもマニアの方には説明は要らないでしょうが、JBLの中でも特に代表的な名機です。 JBLを代表的なスピーカー「HARTSFIELD」「OLYMPUS S8」にも使用されているという高級ドライバーユニットです。 |
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この「375」ですが、「PARAGON」では左下写真のようにホーンの根元に付いており、外すと右下写真のような2インチドライバーユニットになります。 非常に大きいマグネットがついており、総重量は10kgを超えます。 脱着をする際はさすがに片手ではできません。 |
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「375」は「PARAGON」が発売される1957年の以前の1954年から、1980年発売の後継モデル「376」が出るまで約25年の長い期間販売されていました。 そしてその長い販売期間中にいくつか小変更があったようですので、そこらへんを調査してみました。 まずは「PARAGON」に搭載される前の初期「375」です。 |
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これはマニアの方々の間では「バブルバック」と呼ばれ非常に人気のある「375」です。 当社でも単品としては過去に3ペアしか入荷のない稀少なモデルです。 巷では非常に高値で取引されています。 以降の「375」に比べお尻?がプックリした形が特徴です。 なぜこの形が変更されたのかは今のところわかりませんが、このデザインはなかなか愛らしいです。 巷ではたまに、この「バブルバック」が搭載された「PARAGON」を見かけますが、これは後から入れ替えをされているものと思われます。 写真左上がおそらく1954年モデル(JIM LANSINGプレートでネジ式ターミナル)、右上がおそらく1955〜1956年モデル(!Lマークでファットターミナル)と思われます。 当時のカタログを確認したところ1956年まではこの形だったように思われます。(他資料でも1956年に仕様変更されているといったものがありました) 左下が1956年のカタログより、右下が1957年のカタログより。 LansingHeritageより: http://www.lansingheritage.org/html/jbl/catalogs/jbl-catl.htm |
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そして元々「PARAGON」に搭載されている「375」は、従来よく見かけるモデルで「フラットバック」と呼ばれているようです。 以降はずっとこの「フラットバック」なのですが、外観上・内部で少し変更が見られました。 下は「フラットバック」初期(左)のものと、それ以降の「375」(右)です。 わかりやすい違いはシリアルプレートとターミナルです。 |
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「フラットバック」初期のものは先程の「バブルバック」後期のプレートと同じ仕様(左下)になっており、その後のモデルはしばらく右下のタイプのプレートになります。 個人的な推測ですが、ウーファーの「LE15A」がブルーフレームの時代(1964年頃)あたりからこの新プレートの「375」に変わったのではないかと考えています。 |
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ターミナルも「フラットバック」初期の頃は「ファットターミナル」(左下)、以降のものは定番の少し細くなっているもの(右下)になっています。 この辺もウーファー「150-4C」が「ファットターミナル」であったのに対し、後継の「LE15A」が細いターミナルになった事を考えると同様の時期(1964年頃)だったのではと考えられます。 |
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それから、「フラットバック」初期モデルとその次のモデルは、四隅にある赤蝋の下で使用されているネジがマイナスネジになっています。 この辺はネジ交換されている個体もあるので断定しにくいところですが、シリアル15000番近辺でプラスネジに仕様変更されているように思われます。 時期的にはウーファーやツイーターが8Ωモデルになった少し後くらいと思われるので1970年頃までには変更されたのではないかと考えています。 |
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またマニアの方々の間では、このJBLの刻印入りの赤蝋「封印」が付いているものに価値を見られている方が多いようです。 おそらく内部に手が入っていないという証、といったところもあると思われますが、メンテナンスをしていてたまに質感の違う刻印なしの封印も見かけますので(後で手持ちの赤い蝋で蓋をしている?)その辺りも注意していただけたらと思います。 |
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それから、開けられていないから必ず良いかどうかというと一概には言えないように思われます。 よく内部の吸音材や端子・ビスなどが朽ち果てているものがあり、それらの欠片やサビの塊が振動板にくっついて歪みの元になっていたりするものもよく見かけます。 こればかりは開けないとメンテナンスできないので、ご配慮いただきたいところかと思います。 吸音材は古めの個体(おそらく1964年頃のモデル)ではオレンジ色でした。(左下写真) 以降はずっと黒い吸音材になっていました。(右下写真) 初期のものはしばらく入荷がなかったため確認できませんでした。 ちなみに今まで見た「375」は全て吸音材はボロボロでした。 個人的にはやはりここの部分はウレタンエッジなどと同じく、交換されるほうが良いのではないかと思うところです。 ターミナルから続いているリード線の端子は初期では薄いクワガタ端子で、以降は厚みのあるクワガタ端子になっていました。 ここもひどいものは酸化し、導通が危ぶまれるものもありました。 |
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後期になると丸いプレートになります。(左下:375、右下:376) ただこのプレートの「375」の製造期間はほぼ一年くらいと見られ、あまり見かけません。 そしてそのまま後継モデルの「376」に変わります。 表記自体は「375」の文字が「376」に変わっただけです。 その他の違いは内部の振動板が変更されたのが大きい変更点です。 |
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そしてここが「375」の特に重要かと思われる部分であるダイヤフラム(振動板)です。 「375」のダイヤフラム(左下)はエッジの部分がロールエッジになっていますが、「376」(右下)になるとエッジ部分がダイヤモンドカットになっています。 このダイヤフラムで音質が大きく変わってきます。 どちらが優れているかという訳ではありませんが、やはりマニアの方々の間では純正のダイヤフラムが付いているという事は大切な事だと思われます。 |
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また、この「375」純正ダイヤフラムも初期の頃は材質が少し違うようで、その分音質も少し違います。 外観上は少し金色がかったようなコーティングがされていました。(写真ではわかりづらいですが実物ではわかりやすいです) |
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そしてダイヤフラムの裏側(これは金色感が少し出ていると思います)と、そのダイヤフラムを外した時に見える磁気回路です。 |
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ちなみにホーンの「H5038P」は「PARAGON」専用品だそうで、「PARAGON」以外には使用されていません。 ただ、プロ用モデルとして「2343」というグレー一色のモデルはあったようです。(当社入荷で1ペアのみという激レア品ですが) |
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いかがだったでしょうか? 相変わらずユニット一つでなかなか話が尽きません。 さすがは「PARAGON」。 次回もやはりツイーター「075」だけで終わってしまうのか・・・? それではまた! |