ハイファイ堂メールマガジンをご覧のみなさま、こんにちは。 大丸東京店の北村です。 |
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「インシュレーターで音が変わるなんてウソでしょ?使う必要あるの?」 最近、続けて何人かのお客様からご相談を受けた案件です。使う必要があるかどうかは個人の判断に委ねますが、「音が変わる」というのは紛れも無く事実。例えばスピーカーの下に設置するインシュレーターひとつで、印象ががらりと変わるケースもあります。 機材の下に設置するだけという手軽さから、様々な場面で音の調整に活躍してくれるアクセサリーですが、種類が豊富なのでどれを選べば良いのか迷ってしまうこともあるかと思います。 今回のメルマガは「インシュレーター聴き比べ」です。素材の違う4種類のインシュレーターで比較試聴を行ない、それぞれの違いをチェックします。素材による特徴など参考にしていただけたらと思います。 |
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隣の写真が試聴に使ったJBL 4312M?(BK)。 181×300×180mm、4.0kgのお手軽サイズながら、セッティングの微調整にもよく反応する高性能コンパクトモニター。 |
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設置は下から、置台→ 薄型制振ボード → インシュレーター → スピーカーの順でセッティング。 インシュレーターをスピーカー底面四角に設置する、「4点支持」で試聴します。 まずはスピーカーを薄型制振ボードの上に直置きにして鳴らしてみます。4312M?はサイズのわりにはなかなか勢いのある元気な音が出るスピーカー。このままでも「こういう音なんだな〜」と納得してしまいますが、色んなソースを鳴らしていくと、ちょっと手を入れたくなってきます。特にボーカルの輪郭がもう少し締まると良い感じになるのだが…。今回はインシュレーターでの調律。では早速いってみましょう。 |
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●ゴム足 まずは近所の100均ショップで購入したゴム足です。商品の用途には「防振用」とありますが、スピーカーの写真とともにオーディオ用にも使用できると明記されていたので試してみました。 8個入りでしたが、よ〜く見ると極僅かに大きさにバラつきのある個体がありました。100均製品にこのあたりの仕上げのクオリティを求めるのはちと酷でしょうかね。果たして音質の方はどうでしょうか。 |
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直置きに比べ、低域の伸びが若干良くなったようです。こもり気味だった部分が少しすっきりして、低域の微妙な音階が分かりやすくなったせいかもしれません。弾むような弾力も良い。 高域はあまり変化が無いように感じましたが、全体的には落ち着いて聴きやすくなったサウンドではあります。繊細さが求められるクラシック曲よりもロック系がマッチしそう。 ゴム質なので滑りにくく、少しくらい押してもずれたりはしませんのでデスクトップオーディオに好適かと思う使用感でした。108円でこれなら充分満足。とりあえず何かインシュレーターを、という応急処置的な場面でも活躍してくれると思いますが、上から押しつぶすと少し歪むので、あまり重たい物を乗せるのには向かないかもしれませんね。 |
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音の質感 軟 ―●――――― 硬 音の解像感 ★★☆ 低域の量感 ★★★☆ 使いやすさ ★★★★ 総合評価 ★★★ |
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●audio-technica AT6099 お次はaudio-technica製ハイブリッドインシュレーター「AT6099」。 オーディオ専門店だけでなく、街の電気屋さんでもよく見かけます。本格的な造りながら4,000円(税抜)という価格が魅力のロングセラーモデル。 6個1セットなので、今回のようにスピーカーを4点支持で使用する場合は2セット必要になるので要注意。 公式ホームページによるとハネナイト、真鍮、ハネナイト、ソルボセインによる4層ハイブリッド構造。手にとると、見た目の印象より重くてしっかりしています。 接地面がゴム質なので滑りにくく、少しくらい押しても位置がずれたりはしません。 |
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低域に重心があり、元気の良い鳴りっぷりです。4312M?のキャラクターによく合っています。特にボーカル帯域の密度感が良い。100均ゴム足ではちょっと甘かった音の粒立ちの良さが際立ちます。 ハイブリッド構造との事ですが、接地面・支持面がゴム質のせいか、音質傾向はゴム系に近い印象を受けました。 耐荷重は1個あたり5kg。いろいろ使ってみた経験では、耐荷重いっぱいの物を乗せるより、小型・軽量なスピーカーやプレーヤーに使用する時の方が効果が大きいようです。今回の組み合わせでは全体的なバランスの良さが好印象でした。 インシュレーター自体に適度な重さがあるので、プレーヤーの天板に乗せて振動を抑えるような使い方もおもしろいかもしれません。 |
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音の質感 軟 ――●―――― 硬 音の解像感 ★★★☆ 低域の量感 ★★★☆ 使いやすさ ★★★★ 総合評価 ★★★★ |
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●TAOC TITE-35S お次はTAOCの「TITE-35S」。このインシュレーターはスパイク部と受け皿部で構成されています。スパイク部がハイカーボン鋳鉄、受け皿部はアドバンスドハイカーボン鋳鉄製。手に取るとズシリと重い。 4対1セットなのでスピーカーL/Rに使用する場合は2セット必要となります。 |
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音質は解像度が高く、ボーカルが2本のスピーカーの中央にビシっとシャープに定位します。音の鮮度が高いので空間表現が明確でリアリティがあります。 キレの良いスピード感ですが、線が細くなるような感じはあまり無いです。これを聴いた後にゴム系インシュレーターを聴くと、何だかモワッとしたように感じてしまいます。 中低域は引き締まっている分、量感は控えめに聴こえました。4312M?にしては、ちょっとおとなしい鳴り方かな。ピアノの音は程よい緊張感があって◎。組み合わせとしてはもっとシャープな音作りのスピーカーの方がマッチしそうですね。 ゴムに対して金属系はけっこう滑りやすいです。ちょっとぶつかっただけでも位置がずれてしまう事があるので注意が必要かもしれません。その場合は接地面や支持面にスペーサーを挟むとしっかりとしたグリップで支えられますが、スペーサーを挟む事によってまた音質が変化するのがおもしろい。床や機器との接点部分の材質が音質に大きな影響を与えているという事なのでしょうね。 また、公式ホームページによるとスパイク部と受け皿部、どちらを上下にするかで音のチューニングが違うとか。何れにせよ使いこなしの難易度はちょっと高めのインシュレーターだと感じました。 |
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音の質感 軟 ―――――●― 硬 音の解像感 ★★★★ 低域の量感 ★★★ 使いやすさ ★★☆ 総合評価 ★★★☆ |
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●fo.Q CS-02 次はfo.Q(フォック)の「CS-02」を試聴します。公式ホームページによると、「有機高分子ハイブリッド型制振シートと高級炭素繊維強化プラスチック (Carbon Fiber Reinforced Plastics)を複合した、最新の材料」とあります。素材としてはカーボンに似た部類になるのでしょうか。 手にとってみた第一印象は「軽い」そして「硬い」。2つを打ちつけてみるとカチ、カチと鳴りますが響きはかなりデッドな音。軽いですが密度は高そうです。 インシュレーターはある程度重量があったほうが安定しそうなイメージがありますが、音質はどうでしょうか。 |
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音のスピード感は金属系のTITE-35Sに匹敵。速いと言っても切れ込むような鋭さというより、音の逃げ足が速いという軽やかな感じ。金属系でスピード感に伴ってアクセントとなる高域の硬さが、こちらではそれほど強く出ないのです。なので音のレスポンスは速いのですが、同じくスピード感のある金属系とは違った、もっとニュートラルな印象を受けました。中低域は張りがある独特の表現で、ボーカルが前に出てくる。スピード感は欲しいが、耳につく高域が苦手という場合にオススメ。 セッティングは手軽ですが、表面がサラサラしていて滑りやすい質感なので手で押すとズレます。試しにスペーサーとして薄いゴムを挟んでみましたが、一気に音が甘くなってしまいました。あと、4点支持よりも3点支持の方が音が引き締まる感じがありました。使いこなしはいろいろと試してみる価値がありそうです。 |
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音の質感 軟 ―――●――― 硬 音の解像感 ★★★★ 低域の量感 ★★★ 使いやすさ ★★★ 総合評価 ★★★☆ |
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最後におまけを。おそらく現在最安値で入手できるインシュレーター(?)をご紹介。 厚さ約1.5ミリの極薄設計! 純アルミニウム削り出し! 日本造幣局謹製! |
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その名は・・・「一円硬貨」!! アルミニウムを含んだ素材のインシュレーターが世に存在するのだから、同じくアルミ製の1円玉だって効くのでは?“硬貨インシュレーター”は一部のオーディオファンの中では有名な話。高額なインシュレーターも販売している側として、こんな物を紹介して大丈夫なのかとも思いますが、…こっそり試しちゃいましょう。 |
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他のインシュレーターと同じ4点支持ではガタつきがとれなかったため3点支持で設置。LとRで、ズバリ6円。音質は軽めのトーンですが、直置きでモヤついていたボーカル帯域がわりとスムーズに出てくる。音像の輪郭描写も及第点で、直置きに対してそれほどプラスになっているとは言えませんが、マイナスでもないなという印象。ただ、低音を含めた音の密度感はかなり薄く、何か安っぽく聞こえる…。やはりそうそう上手くはいかないようですね。使いどころとしては、直置きだと接地面が共振してビビってしまう場合などに効果的だと思います。 なお、この“インシュレーター”は故意に傷をつけたり、加工をすると法律に触れますので取り扱いにはご注意を。 え?10円玉にすると10倍音が良くなるかって?それは鳴らしてみてのお楽しみ。お試しあれ。 |
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以上、4種類+αの比較でした。 今回比較した中では、個人的には4312M?にはAT6099がベストマッチだと思いました。 4モデルの他にもいくつか試してみたのですが、総じてゴム系の素材が好結果でした。4312M?は軽量なので、しっかりとしたグリップの効く支えで支持したのが良かったのかもしれませんね。小型軽量スピーカーはインシュレーターの効果や違いが出やすいので、聴き比べには好適ですよ。 あとインシュレーターの代表的な種類としては木製のウッドブロック等がありますが、今回は準備が間に合わなかったのでレビューからは外しました…。木製品は設置する木目の向きでも音が変化するそうで、今度じっくり聴き比べてみたいなと思っています。 |
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それにしてもインシュレーターでこれほど音の印象が変わるとは改めて驚きました。それに、必ずしも高価な物の方が良いという訳ではないのが愉快。 使う機器や素材のクセを把握し、適材適所の振り分けでこそ真価を発揮するアクセサリー。ただ買って置いただけでは甘い。同じインシュレーターでも、4点を3点支持にしたり、天地を逆にしたりするだけで音が変わってくる。本気でやり込むと随分と深い世界なのです。 冒頭で「使う必要があるかどうかは個人の判断に委ねる」と書きましたが、それについてちょっと補足しておきます。 断りを入れたのはインシュレーター等アクセサリーの使用で音質は確かに変化するが、果たしてそれは“良くなった”音なのかどうかの判断が難しいからです。インシュレーターを使用する事によって特定の帯域が強調されたり、スピーカーの持つ本来の鳴り方が変わったりするのは当たり前。 音の質を上げるというよりも、好みの音にチューニングするためのアクセサリーと捉えたほうが分かりやすいかもしれませんね。 これに関して私個人の見解は単純。「良いか悪いかなんて関係無い。好みの音に近づけば、それでいい」そんなスタンスでやっています。参考にしていただけたら幸いです。 それでは、今回はこの辺で失礼致します。 ハイファイ堂大丸東京店 北村 ハイファイ堂大丸東京店 〒100-6701 東京都千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店10階 TEL 03-6256-0516(直通) 03-3212-8011(代表) |