ハイファイ堂メールマガジン

あの音にもう一度出会いたい第21話「DIATONE スピーカー　DS-205」　 2006年6月2日　近藤賢二　1946年、ダイヤトーンは日本伝統の技術で開放的な音と豊かな響きを世界のオーディオファイルの耳に認知させた。そんなダイヤトーン工房の技術とサウンドも押し寄せる時代の波に乗れなかった。三菱電機は業務部門縮小のため、伝統あるダイヤトーンスピーカー部門を7年前惜しくも廃業した（注）。しかしダイヤトーンスピーカーは今だダイヤトーンを愛するオーディオファイルの元で脈々と息づいている。（注）ダイヤトーンスピーカーは2005年12月DS-MA1で7年ぶりの復活を遂げた
因みにオーディオ評論家福田雅光氏はダイヤトーンDS-5000を23年もの長きにわたって愛用されている一人である。2年前京都のオーディオショップでA社の機器試聴会が行われたとき、福田氏が講師として来ておられたので、いろいろ質問させてもらった。「福田先生はダイヤトーンのDS-5000を現在なお愛用しておられますが、今後導入を考えておられる新しいスピーカーはありますか」と質問したところ、次のような回答された。「現在国内外メーカー問わず自分の気に入ったスピーカーは存在しない」ということであった。それだけ現在愛用のダイヤトーンDS-5000に愛着もあり、気に入っておられるものと察した。（写真は過去情報データベースより引用　DIATONE DS-5000）
	DS-205は小口径ウーファーと大型のエンクロージャーの組み合わせである。たっぷりとしたエンクロージャーで、小口径ウーファーをのびやかにならしてみたい、とハイエンドで伸びやかな鳴りを求めたモデルである。日本初となる放送局用モニター2S-305のデザインをベースにしているため、2S-3003、2S-1601とどことなく似ている雰囲気もあるが、DS-205はバッフルのアールの線がすごく綺麗で芸術品的な美しさがある。前後面ラウンドバッフルとした2ウェイだが、ユニットは軽く剛性の高い新開発アラミド振動板や、ピュアボロン振動板などが採用されている。エンクロージャーはブナ板11枚クロス積層ボードとカナデアンメイプルで構成されている。福田氏と同じく愛着のスピーカーと呼ぶにふさわしい、トラディショナルなキャビネット・デザインも心をくすぐる。一度は真空管アンプで鳴らしてみたくなるような深い味わいがあった。（写真は過去情報データベースより引用　DIATONE 2S-305）
DS-205は確か今から9年ほど前に発表されたと思う。当時大阪のオーディオショップで新製品発表試聴会が開催され、一度試聴したことがある。DS-205の姿を初めて見たとき、ダイヤトーンの顔となっていた一連のZシリーズとは方向性が全く異なっていたから驚いた。しかしよく見ていくとラウンドバッフルのアールの曲線が前面だけでなく、背面にも持たせてあり、前面および背面へ両側から回りこみ、幅を狭めた前面バッフルおよび側面へと接続している造型が見事である。キャビネット容量は80リットルとたっぷり確保しており、バスレフポートも大きく設定してある。また天板のピアノ塗装仕上げが綺麗で、その美しさにしばし見惚れていた。（写真は過去情報データベースより引用　DIATONE DS-205専用スタンド付）

「多分フェースと同じように美しい音を奏でてくれるであろう」と期待していた。試聴会では専用スタンド（DK-205）も用意されていて備え万全だった。初めに聴いたのは声楽のオーケストラものであった。一音が出た時、その豊かな響きと、しなやかさ、弦楽四重奏及びジャズコンボやヴォーカルをこころゆくまで聴かせる感性豊かな音質。歌も肉声的な温かさはそのままに明瞭さがグゥーンと向上してくるようで、伸び伸びと歌っている感じだった。ステージ上の空気も晴れてきた感覚でオーケストラの音場空間の見通しも断然よくなって豊かな広がりを見せていた。期待のジャズではベースが余裕をもって、たっぷりと鳴るだけではなく、音の動きが明快な感じになり、引き締まって弾力的な再現性であり、ジャズのダイナミック感が豊かに表現される。よくスイングする伸びやかで乗れるリズム感も素晴らしいものがあった。いずれにしても、DS-205は国産スピーカーシステムの中では伸び伸びとよく鳴る、品がよいスピーカーシステムであることが実感できた。今後もしハイファイ堂さんに入庫するようなことがあれば、要注目機だ！
美しい響きと、のびやかに歌う「あの音にもう一度出会いたい」

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