Mark Levinson ML-1LとJC-2の考察、モジュールの話 大須本店 越濱 靖人 |
|
久々にJC-2を触り、マークレビンソンの良さを再認識しましたので、今週はJC-2とML-1Lの特集をお届けしたいと思います。 私が最初にレビンソンに出会ったのは入社したての頃、ML-10Lでした。当時はEXCLUSIVE model 2301という2Wayホーンスピーカーを使っていました。マルチアンプでチャンデバと格闘していた日々を思い出します。良いプリアンプがないだろうかと思っていたところ、レビンソンが入荷し、試聴した時に強く感動したことがレビンソン教に入るきっかけとなりました。 その時には、私にはML-10Lを買うほどの財力がなく、他のお客様にオススメし購入頂いたのを覚えています。その後JC-2が入荷し、翌朝目覚めた時に「今日レビンソンを買いなさい」と神様のお告げがあり、即買いしました(笑)。現在は手元にありません。別のモデルを使用しています。未だレビンソンの魅力に取り憑かれ、現在も大好きでいます。 |
|
最初の写真がJC-2、次の写真がML-1Lです。 外観 顔はほとんど一緒です。一番左がインプットセレクター、次にテープモニタースイッチ、テープセレクターと続きます。真ん中に付いているのはバランス調整つまみで左右独立型、-4〜+5までクリック調節可能です。少し音を前に出したい時や大人しくしたい時にも使用します。次はモノラル・ステレオ切り替えスイッチ、ゲイン調節スイッチ、アウトプットボリュームとなります。初期JC-2はつまみが小さいです。JC-2後期モデルはML-1Lと同様、大型のつまみに変更されています。 音質 どちらも似たようなモデルですが、音は違う印象です。JC-2はキレ味とパンチがあり、アグレッシブな印象です。アメリカンサウンドを象徴する乾いた元気の良いサウンドが印象的です。ML-1Lは中域の厚いふくよかな印象。全体的に厚みがあり太めに感じます。ただボケているわけではなく、ヌケよく乾いた音色は健在です。どちらのプリにも言えるのは音の精度が高いところ。ボリュームが非常に正確で、小さな音量でもギャングエラー(左右音量差)が出ません。しかも緻密で突き抜けて鋭い。私はこのイメージを「爪の先まで音が出る」と表現しています。どちらのプリアンプでもこの印象を感じることができます。この辺がマークレビンソンファンの多い所以だと思います。 |
|
ボリュームの隣にはHIGH/LOWスイッチが付いています。レビンソンのゲインが非常に高く、少し回すだけで急激に音量が上がってしまうため、ゲインを下げるよう調節できるスイッチです。通常HIGHで使用すると普通の家庭の環境では恐らくゼロから1目盛り上げるのがせいぜいだと思います。とてもゲインが高いです。ただコレがアグレッシブで情熱的サウンドを生み出しています。 音量が高すぎてスイッチをLOWにすると音量は下がります。ただ音の印象も弱くなり大人しくなってしまいます。音楽の活き活きした感じがなくなり、情熱的な感じも失われてしまうため、使いにくくてもHIGHで使っている人は多いかと思います。 |
|
初期のJC-2電源です。最近ではあまり見かけなくなりました。というのもモジュール化された古い電源は修理が出来ないため、新しい電源を作るしかない事が多いのです。さすがに30年前のものですので動作していても本来の性能を発揮しているか疑問です。音はやや中低域の少ないキレの良い音質だったと記憶しています。 |
|
JC-2後期モデル、ML-1L初期モデルに付属しているPLS-150電源です。このモデルからモジュールではなくオープン基盤に変更になり、修理が出来るようになりました。大型のトロイダルトランス、大型キャパシタを搭載し安定した電源供給が可能になっています。音は初期同様キレのある音質をそのままに中低域までバランス良く聞こえます。 |
|
ML-1L後期モデルに使われているPLS-153電源です。前作のPLS-150に加え大型のレギュレーターが搭載されています。これにより音に滑らかさが追加し、今まで以上にキメの細かな表現が可能になりました。ただ、ザックリとしたキレ味が後退し、ややマイルドになっています。 |
|
内部について 上がJC-2の内部、下がML-1Lの内部になります。構成はほぼ変わっていません。一番右の正方形のモジュールはウルトラローノイズフィルターで主にフォノ回路の整流に使われています。通常は電源部で整流したものを使いますがレビンソンは更に念押しでフォノ専用フィルターモジュールを使い超高精度な直流をフォノモジュールに流しています。恐らく電源部からケーブルを伝って来る間に乗ってしまうノイズを更に消したかったのだと思います。ラインモジュールには使用されていません。 次に右から2番目と3番目のモジュールがラインモジュールです。通常CDやチューナー、テープなどの入力はこのモジュールのみを通って音が出ます。このモジュールがレビンソンの音を決定付けています。通常のプリアンプより遥かに高い電流が流れ、熱い音を生み出しています。この情熱的なサウンドは残念ながらサードパーティー製モジュール(他社製)では得られることがなく、オリジナルモジュールでしか感じることが出来ません。最近では偽物も多く、知らずに使われていることが多いです。今回は簡単な見分け方を後に記しますので、一度調べてみることをおすすめします。 最後に右から4番目と5番目のモジュールがフォノモジュールです。主にレコード再生に使用します。ラインモジュールと形は似ていますがピン配置が全く異なるため差し替えることが出来ません。後に発売されるLNP-2はLD2モジュールをライン・フォノどちらにも使用しているため差し替え可能ですが、JC-2やML-1Lでは差し替えが出来ません。通常はMM仕様になっています。モジュールの間に出来た空間にもう一つオプションモジュールを追加することでMCカートリッジも対応出来るように設計されています。音はラインモジュール同様にキレが良く鮮度の高いモジュールです。ハッとする音が出ること請け合いです。 |
|
ボリュームはJC-2がウォーターズ、ML-1Lはスペクトロール製が付いています。どちらも巻線ボリュームでシャコシャコとした軽い感触です。とても精度か高くスパッと調整出来ます。ウォーターズの方が少々荒削り、スペクトロールの方が整っていてやや端正といった印象でしょうか。 中についている黄色いフィルムコンデンサーがJC-2とML-1Lでは違いがあります。JC-2は細長いものが2連で付いていますが、ML-1Lでは大型のものが1個、ボンッと付いています。容量・耐圧が同じかはわかりませんが、この辺が音質に違いを生み出しているのかもしれません。 |
|
少し前にスケルトンタイプのML-1Lがありました。こんなモデルが世に存在したことは驚きです。これを購入したお客様に教えて頂いたのですが、なんとML-1LはJC-2と同じ基盤を使っていると言われました。確かに底面(下の写真)を見るとJC-2と書いてありました。 違った型番なので当然ML-1Lの基板だと思っていました。JC-2のカラッとした音質と対照的に太く深みのあるML-1L。同じ基板なのにガラッと音質が違う所が、またレビンソンの奥深いところです。 |
|
偽モジュールについて 下の写真2枚は偽のモジュールです。本物そっくりです。ただプラスチックモールド(外ケース)はよく見ると家にある電話の分配器のケースをそのまま流用しています。裏面を見ると、オリジナルには必ず調整用ボリュームが2個付いていますが、写真のものはありません。恐らく全く違うアンプが中に埋め込まれていると想像出来ます。これでは本来の音が出ません。 |
|
下の写真 左が偽モジュール、右が本物モジュール(修理してモールドを交換しています)そもそもオリジナルはサイズが違います。 |
|
偽モジュール(左)は角が丸いです。オリジナル(右)のモールドは角が鋭角です。 |
|
JC-2モジュールの裏面。修理していますのでエポキシ封入がフラットになっていませんが調整用ボリュームが2個付いています。 |
|
LNP-2のLD2モジュール裏面。これも同様に調整用ボリュームが2個付いています。 余談になりますが、JC-2とML-1Lは同じモジュールですがLNP-2に使用されているLD2モジュールとは互換性がありません。LD2モジュールはゲインが低くJC-2やML-1Lのモジュールはゲインが高く設計されています。もし間違って使用していた場合、本来の音になりません。 今まで修理した中でLNP-2にML-1Lのモジュールが付いている事がありました。ML-1LモジュールとLD2モジュールはピン配置が同じなのでストレートに搭載出来ますが、危険ですので絶対おやめ下さい。 |
|
モジュールはハンダ付けされておらず、上に抜くとスポッと引き抜くことが出来ます(下の写真はフォノモジュールを抜いたところ)。基盤の穴にピンをはめるだけになっています。簡単に確認出来ますので、一度見てみてはいかがでしょうか。 |
|
コレを書いているうちに、ついついレビンソン熱が入ってしまいました。とりとめもない記事になってしまいましたが、やはりマークレビンソンは今でも一級品です。特に古いものは今にはない情熱と感動を与えてくれます。お持ちでない方は一度手にしてみて下さい。 なお、ハイファイ堂ではオールドレビンソンの修理を得意としております。お困りのことがあれば是非一度お電話下さい。モジュールの修理も受け付けております。 http://www.hifido.co.jp/merumaga/osu/100402/index.html |