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10分で作れるオーバーハング・ゲージの作り方大須本店　越濱　靖人

レコードファンにとってオーバーハングは再生で非常に大切な調整です。意外と計ったことがない，もしくはずれっぱなしの方もいるのではないでしょうか。確認の上で一度調整し直してみてはいかがでしょうか。今日は簡単・手軽で確実なオーバーハングゲージの作り方をお伝えします。

まず，オーバーハングの意味ですが一般的なプレーヤーのアームは必ず「トラッキングエラー」が発生しています。これを最小限に抑え，溝に対して水平に針が当たるようにするのが「オーバーハング調整」です。これにより外周，内周にかかわらず歪みのない，クリアな音質を出すことができます。

通常，内周でオーバーハングを合わせます。それは内周の方がトラッキングエラー発生率が高く，ちょっとしたことで歪みやすいからです。ちなみに外周はある程度角度が違ってもあまり歪むことはありません（大きな円のため，外側は角度がずれにくく水平を保ちやすいからです）よく「スピンドルから11mmでOK」などと言われますが，この計り方は実際の所うまく合っているか分かりません。それぞれの計り方に誤差があるからです。要は「いかに溝と水平にトレースするか，スピンドルから見て垂直であるか」がポイントです。今回のゲージは理に叶った方法で測定します。これはSMEやthorensのゲージを参考にしています。

まずはハサミ，定規，ボールペン，厚紙，パンチを用意します。これだけで十分です。

縦１６ｃｍ，横５ｃｍに切ります。

上面の真ん中あたりにパンチで１カ所穴を空けます。これがスピンドルに刺さる部分になります。

空けた穴の真ん中から垂直に１本線を引きます。

穴の中心から６ｃｍ・１０ｃｍ・１４ｃｍに印を付けます。

印を付けた部分に垂直線を入れます。ここは必ず９０度になるよう慎重に書き入れて下さい。

今引いた線を中心に両脇５ｍｍ間隔に印を入れます（計６カ所）

前と同じように垂直線を６本書きます。中心線に対して垂直に書いて下さい。これで完成です。

ボールペンの先を示している部分が針を乗せる部分です。

プレーヤーにセットします。おそらくパンチ穴が若干小さいかもしれません。中心がずれないようにそっと押し込んで下さい。

まずは内周から測定していきます。スピンドルから近い３本線の中心にカートリッジの針を置きます。この時は測定がしやすいようインサイドフォースキャンセラ（アンチスケーティング）機構をＯＦＦにしてください。そのままだとアームが外側に流れてしまい針先にも負担がかかってしまいます。

針を置いた状態で真上から測定します。カートリッジの向きとゲージの線は平行になっていますか？線と水平になっていない方はカートリッジをゆるめ，水平になる位置を探して下さい。何回もゆるめてきちっと合うようにして下さい。もしどうしても合わない場合はアームベースの位置がずれています。アーム位置をずらし計測し直して下さい。

内周が終わったら，外周を測定します（右上の写真）

外周もぴったり水平になりました。ベストセッティングです。これで内周でも外周でもスムーズなトレースができそうです。

確認の意味を込めて，真ん中の３本も試しておきます。内・外周が合っていればずれることはないです。

これでオーバーハング調整は終了です。一緒に調整しておきたいのは・カートリッジの頭から見て針先がレコード面に垂直に当たっているか。・アームの高さと針先の高さは水平であるか（先端とおしりは水平か）も確認しておきたいところです。

早速，音出しです。外周が終わった後，内周の方の再生を行って下さい。以前よりノイズや歪みの少ないクリアなサウンドになったはずです。私も若干ずれていましたので，調整後は非常にすっきりとした気分で聞き終えることができました。

アナログの調整は２つ良いことがあります。・きちんと調整することで音質が良くなること。・精神的にも納得がいく再生ができること。高い満足感を得る為に，自分で直視し調整ができたことを認識して下さい。