先ほど、二度目の国宝展から帰って来ました、京都商品部の朴 高史です。 現在、京都国立博物館で開催中の国宝展は、4回の入れ替えがあり、前回が第二期(雪舟の4点や風神雷神図、曜変天目茶碗などが話題となってました。)で、今回が第四期(神護寺三像、光琳の燕子花図、応挙の雪松図、喜左衛門 大井戸茶碗、などが見所かと)です。両日とも平日の昼過ぎでしたが、大変に混み合ってました。(大人気です。) 写真や映像で見覚えのあるものや、全く見たことの無いものなど、どれを見ても国宝です。 中国の物が多かったり、琉球王朝の物があったりと意外に思うところもあり、仏像、仁王像などの巨大木像の展示も圧巻で、やはり見応えがありました。 そんな中で最も衝撃を感じたのが、「伝 藤原行成筆 仮名消息」(第四期の展示です)そんなに大きくない書跡の展示物です。 京都の鳩居堂(お香などを扱ってるお店です。)の所蔵で、何かの書き物の裏側に、ひらがなの試し書きがランダムにされてます。綺麗な文字ですが、これも国宝かと思ってしまいました。 国宝展は、11月26日までです。 |
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で、今回は、私、ハイファイ堂に入社しまして7年ほどになりますが、この仕事での役得と言いますと、やはり一般ではまず見られない様々なオーディオ機器に出会えることかと。 そんな中にはマニアにとっては国宝級(は、少し言い過ぎか、)に珍しいものもあったりします。 ということで、私が、ハイファイ堂で出会ったレアなオーディオ(スピーカー類ばかりになってしまったのですが)を振り返って見たいと思います。 まずは、異質感で印象的だったのがこちら JORDAN WATTS FLAGON CERAMIC |
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やはりこれかと思います。 入社年の日本橋店勤務時でした。京都店からの転勤でまだ日本橋店にあまり慣れない時期だったのと、外観に似合わずというか、外観どおりというか印象的な音がしました。忘れられないです。 当時は、その独特のエンクロージャーの影響による音かと思ってましたが、様々に学んだ今は、使われているそのユニットに音の本質があることを知ります。 |
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JORDAN WATTS社は、1963年、Goodman社で、エンジニアであったE.J.ジョーダンと同僚であったレスリー.E.ワッツにより興されたメーカーです。 「Module Unit」と名付けられた、小さなフルレンジユニット(10cm口径のアルミニュームコーンで、3本のベリリウム銅線のワイヤーカンチレバー式サスペンション、四角いケースに、ケーブルは直出しになった、かなり特殊な代物。)と、そのユニットが、使用されたスピーカーシステムを販売していたようです。 |
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最大のスピーカーシステムが、上向に6個、左右に一個ずつの計8個の「Module Unit」を一つの木製エンクロージャーに収めた「STEREOLA DSP-100」です。 JORDAN WATTS STEREOLA DSP-100 (1967) |
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画像はステレオ産業史webページより http://history-of-stereo.com/w-jordan-watts.html |
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やはり、このユニットの弱点が低域の再生のようで、エンクロージャーによる低域再生の工夫がされたモデルがいくつか作られてます。 「GT」2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式 「JODELL」2ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式 「JUPITOR TLS」2ウェイ・3スピーカー・バックロードホーン方式(パッシブラジエーターの物も見れます。) |
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画像はpreservationsound.com webページより http://www.preservationsound.com/wp-content/uploads/2013/09/Jordan_Watts_GT_Jodrell_Jupiter.jpg |
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画像はオーディオの足跡webページより http://audio-heritage.jp/JORDANWATTS/speaker/juno.html http://audio-heritage.jp/JORDANWATTS/speaker/jupitertls.html |
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FLAGON CERAMICの場合は、ほぼユニットそのままの音かと思われます。(コルク栓部がバスレフぽいですが)アルミコーンの金属的な響きが、まるでワイン壺の底から響き渡る様に音を出すところから、メタファーとしての陶器壺のエンクロージャーが見事に嵌り、また、生活空間に溶け込まそうとの(オーディオ機器に囲まれるとかなり異質です。)狙いからの奇跡的に完成されたプロダクトかと感じます。 陶器ゆえの壊れやすさで、後半は素材(形状も少し)変更され、また、このユニットは、メンテナンスが不可能なので、この陶器製のモデルで、ユニットの状態の良いものは、かなり希少かと思います。(かと言って、価格が上がってる様ではないです。) 2010年の入荷後は、2015年に素材違いの後期モデルが秋葉原店に入荷していた記録があります。 |
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大きさで印象に残るのがこちら VITAVOX Bass Bin CN308 低域用:38cmコーン型(AK-157)×2 高域用:ホーン型(S-2+220SシリーズorCN-123) ネットワーク:NW-500 |
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京都店の二階でメンテナンスを始めた頃です。日本橋店への買取依頼の応援で、大人数で、坂の上の大きなお屋敷への引き取りに行きました。 レンタルのトラックで日本橋店へ運び、ウェブ・アップ用の写真撮りなのですが、狭い店舗なので、外からの撮影となりました。 エンクロージャーのみの大きさが幅960×高さ2,200×奥行800mmそれに、マルチセルラーホーンCN-123を合わせますと、高さが2700mmくらいになってしまいます。 で、この巨大なスピーカーシステムは、一体何者かとしらべてゆきますと、ある歴史的シアターシステムに辿り着きます。それがこちら、 MGM, Lansing Manufacturing「 Shearer Horn Model 75W5」(1936) |
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画像はaudioheritage webページより http://www.audioheritage.org/html/profiles/lmco/shearer.htm |
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トーキー映画が、本格的に導入され始めた1930年代初頭、当時多く採用されていたムービーシアターの音響システムがウェスタン・エレクトリック社の「ワイドレンジ」システムでした。 |
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画像はaudioheritage webページより http://www.audioheritage.org/html/profiles/lmco/shearer.htm |
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しかし、このシステムの性能に不満があったのが、当時全盛期だった映画会社の「MGM」で、ウェスタン・エレクトリック社に、システムの改良を依頼しますが、断られます。 やむなく自社で音響システムの開発を始めます、それに協力したのが、のちに「JBL」を創業するジェームス・B・ランシングのLansing Manufacturing社でした。 (スピーカーユニットの開発生産を担当してたようです。)この時に作られたのが、低域ユニット15XS、コンプレッションドライバー285です。 この「Shearer Horn」システムは、見事に成功し、以降のムービーシアターの基本システムになります。(ウェスタン・エレクトリック社や、RCA社も同様のシアターシステムをつくってます。) ジェームス・B・ランシングのLansing Manufacturing社もこの「Shearer Horn」システムを小型化したものを製造販売してたのですが、あまり上手くいかず、大恐慌の影響もあり、ウェスタン・エレクトリック社傘下のアルテック・サービスへ吸収されることになります。 |
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画像はaudioheritage webページより http://www.audioheritage.org/html/profiles/lmco/shearer.htm |
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この「Shearer Horn 」を小型化(ステレオ化)したシステム「Bass Bin CN308」は、トーキー時代のシアターシステムの面影を感じさせる音が聴けるのかと思われます。 (実際、視聴した覚えはあるのですが、やはり狭い空間ではよくわかりませんでした。) 2011年の入荷以降は、2012年に秋葉原店にウイング付きのモデルが入荷した記録が残っております。 |
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この続き(幻の国産大型スピーカーシステムなど?)は次回以降に予定しています。 ではこの辺りで失礼します。 |